内視鏡検査
当院では「苦痛の少ない内視鏡」を行うために
以下の取り組みを行っております。
1)適切な沈静(軽い全身麻酔)
検査前にあらかじめ「軽く眠ったようになる薬」を注射してから、ボーっとした状態もしくは少し眠った状態でカメラを受けることができます。一見素晴らしい方法ですが、以下のような利点と欠点がありますので、十分ご検討ください。
利 点
これが最大にして最も重要な利点です。
欠 点
終了後すぐに説明を聞いても、半分寝ているので説明を憶えていられません。当院では一時間ほど休んでいただき、麻酔が少し覚めたのを確認してから検査の結果を説明いたします。
また、ご自分では「大丈夫そうだな」と思っても、意外と麻酔は残ります。麻酔を使用した日は一日、車の運転や大きな機械の操作はできません。お酒も飲めません。重要な決断をすることもお控えいただかなくてはいけません。
以下の2枚の写真をご覧ください。これらは、近年食道炎や癌などの病気が多くなっている「食道と胃の境目」の写真です。
Aは患者さんの協力が得られなかった写真で、Bは患者さんに大きく息を吸って、止めていただいた時の写真です。…どうでしょうか?見え方が全然違いますね。患者さんに協力していただいた、Bの写真のほうが病気を指摘しやすいのです。
また、胃袋や大腸は呼吸によって大きく動きますので、一時的に呼吸を止めることで組織採取などの処置が正確に素早くできる場合があります。
これは麻酔薬全般につきものなのですが、麻酔薬を打つことで血圧が下がったり、肺への酸素の取り込みが悪くなったりします。
麻酔中は血圧や酸素を測定しながら検査を行いますので重篤な合併症にはならないことがほとんどですが、稀に危険なことがあります。
麻酔を使わない場合は、異常が見られれば極力その場でそれを説明しながら検査を進めていきます。しかし、眠ってしまっていた場合は説明が後回しになります。※検査終了後、時間を空けてから説明をさせていただきます。
ご自分の胃や腸の中を見たいという方も多いのではないでしょうか?私は自分で検査を受ける時はいつも沈静は使用せず、自分の胃の中を見ながら検査を受けています。
検査中に無理をしているかどうかを確認する手段として「患者さんの反応を見る」という方法をとることがあります。沈静がかかっていると、その「反応」を見ることができなくなり、無理をしていても気付かない恐れがあります。
2)鼻から入れる胃カメラ(経鼻内視鏡)
通常の半分〜2/3程度の太さの内視鏡を用いて、鼻から内視鏡を挿入します。以下のような利点と欠点がありますので、十分ご検討ください。
利 点
「おえっ」という嘔吐反射。これが胃カメラを辛くさせる要因の一つですが、経鼻内視鏡では口からの胃カメラ(経口内視鏡)より嘔吐反射が少ないとされています。
経口内視鏡の場合、マウスピースを噛んでいただきますので検査中の会話はできません。しかし経鼻内視鏡はマウスピースを使用せず、検査中も会話をすることが可能です。検査中に実際の画面を見ながら、ご質問があれば遠慮せずに声をおかけください。
欠 点
そもそも内視鏡が鼻を通過しなければ、検査することができません。実は鼻の中の広さは、個人差が非常に大きいのです。見た目で鼻が大きいかどうかは、あまり関係がない印象です。大きな鼻をお持ちのかたでも、中が狭いということはしばしばあります。
なんとかぎりぎり通過しそうな場合は多少無理をして(カメラを押し付けて)挿入するのですが、終了後に鼻血がでることも多いです。また、狭いところを通過させる時には、鼻に痛みを感じることがあります。左右両方の鼻の穴を試してみて、どこからも入らなければ経口内視鏡に変更となります。
上述した通りですが、特に鼻の中が狭いかたは検査中に鼻の痛みを感じたり、検査後にしばらく微量の鼻血が続いたりすることがあります。鼻血については遅くとも当日中には止まることがほとんどです。
3)口からも細いカメラで
鼻からのカメラで使用する通常の半分〜2/3程度の太さの内視鏡(細径内視鏡)を用いて、口からも内視鏡を挿入します。以下のような利点と欠点がありますが、圧倒的に利点の方が多いと判断しておりますので、当院では細径内視鏡を用いております。
利 点
「おえっ」という嘔吐反射。これが胃カメラを辛くさせる要因の一つですが、細径内視鏡では舌の奥やのどちんこ(口蓋垂)、のどのふた(喉頭蓋)に触りにくいため、普通の太さの胃カメラより嘔吐反射が少ないです。
下の写真はのどの奥(下咽頭)の画像です。写真上の穴に進むと肺へ、下の矢印の方に進むと食道に到達します。
画像を見てお分かりいただけるように、食道に行く道は非常に狭くなっています。普通の太さの内視鏡では、そこを通過する時にどうしても「ウッ」と強い違和感を感じますが、細径内視鏡ではよりスムーズに通過することができます。
欠 点
内視鏡というのは、あの細いチューブのなかに 1)光を照らすための光源 2)画像を送るためのコード 3)処置具や水を入れたり、消化液を吸ったりするための穴 4)空気や水を通す穴 が通っております。内視鏡が細くなるほど、穴は小さくなり、レンズも小さくなり、光もたくさん出せなくなるのです。
上の写真をご覧ください。これは細い内視鏡が出始めた頃の画像です。…かなり暗くて、胃の表面もかなりぼやけています。下の写真は現在の普通の太さの内視鏡と、当院で採用している最新の細径内視鏡の画像との比較です。ほぼ遜色ない画像が得られるようになりました。胃がんの発見率も変わらない、という研究結果もあります。
しかし、わずかに画質が劣ることは事実です。当院では細かく丁寧な観察によって、精度を落とさず検査を行ってまいります。
上述した通りですが、内視鏡が細くなるほど、穴は小さくなります。組織採取は細径内視鏡専用の器具を用いることで可能ですが、例えば「出血しているところを止血する」「ポリープを切除する」などの処置は困難です。ですが、普通の胃カメラでこのような処置を必要とすること自体が非常に稀であり、ほとんど問題になりません。
4)お腹に溜まりにくい空気
胃カメラでも大腸カメラでも、内視鏡を行う時には胃腸の中に空気(ガス)を入れて、膨らませることで隅々まで観察します。
そのガスについて、当院では外科の腹腔鏡手術でも用いている「炭酸ガス(二酸化炭素)」を用います。炭酸ガスは非常に速やかに体内に吸収される(普通の空気の200倍早く吸収される)ため、検査後にガスがお腹に溜まりにくくなっています。吸収された炭酸ガスは、呼吸によって肺から速やかに排出されます。
下の画像をご覧ください。どちらもお腹にガスを入れてから15分でレントゲン写真を撮影しているものですが、左は炭酸ガスを入れた場合、右は普通の空気を入れた場合です。
…どうでしょう?
矢印が指す写真の中の黒いところが腸の中のガスですが、全然違いますね!炭酸ガスの方は速やかにガスが消失しています。このような理由で、炭酸ガスを使用したほうが早くお腹の張りが収まるのです。炭酸ガスは外科の腹腔鏡手術の時にも使用されており、安全性についても問題ありません。
5)飲みやすい下剤の使用
大腸カメラを受ける際には、大量の下剤(洗腸液)を内服していただく必要があります。量にして1800〜2400mlとかなりの量になります。
当院ではこの下剤(洗腸液)について、非常に飲みやすい味の下剤を使用しています。味は「ポカリスエットのような味」と表現される方が多く、「ほかの下剤に比べて飲みやすい」と好評です。
持病の内容によっては他の下剤を用いることもあります。ご了承ください。